ー 父への想いを繋ぐリノベーション ー
—— ある親子の静かな決意と、私たちからの小さな贈り物。
奥様を亡くされ、ひとりでご実家に残されたお父様。
悲しみのなか、
炊飯器の中に何日も保温されたごはんが残っているほど、
暮らしは止まっていました。
そんなご実家に「一緒に住もう」と決められたのは、娘様。
けれど、まだ喪失の渦中にあるお父様を前に、
工事の準備はおろか、日常の片づけすら難しい状況でした。
本来なら、お客様側で工事のための片づけをお願いするのが当然。
でも、私は、静かに涙を流されるお父様を前に、
「この方に、もうこれ以上、頑張らせたくない」
と思ってしまったのです。
私は一つ一つ、暮らしの痕跡を手に取りながら、
工事の準備を始めました。
そんな中、
お父様から唯一いただいたリクエストがありました。
「みんなで、お庭でバーベキューがしたい。
小さくてもいいから、テラスをつくってもらえませんか?」
ですが、娘様が全額費用をご負担される以上、
限られた予算の中で叶えるのは難しく、一度は断念。
けれど、工事が始まって間もなく、
お父様は静かに、天国へ旅立たれました…
私は迷わず、あのリクエストを叶えることを決めました。
お引き渡しのとき、娘様にこうお伝えしました。
「お父様の居場所を、形にしました。
どうか一緒に、テラス席でバーベキューを楽しんであげてください。」
✉️そして、工事完了後に届いたお手紙には——
希望ばかりを伝え、納得のいく仕上がりにして下さいました。
短期間での作業が申し訳ない中でも、
他とは違い、相手の立場に立った温かな対応をしていただきました。
想像していたよりもずっと素敵な仕上がりで、大満足です。
🏡人生の節目を支える家づくりを
私たちがつくっているのは、ただの間取りではありません。
それは、人生の節目に寄り添い、
思い出とこれからの暮らしをつなぐ「器」そのもの。
このリノベーションが、娘様にとっても、
お父様にとっても「最期の贈り物」となったこと。
そのすべてが、私の原点を、もう一度教えてくれました。